洗面器にお湯を溜めながら私はそんな独り言をつぶやいていた。
黄土色の毛が絡まったブラシを洗面器に放り込みぼんやりと眺めていた。
_ 玄関が開けられる音がし、私は我に返った。
_ 振り向くとそこには右向きの直立狐が佇んでいた。
私は言葉を発しながらこの人型狐を知っている事に気付いた。
_ (…知っている?誰?)
_ えも言われぬ感情がこみ上げてくる。
_ (逃げなきゃ…)
_ しかし体は動かなかった。
_ 右向きの直立狐はそこに佇んでいた…